chatGTPも話題となり、AI技術がますます身近なものになってきましたね。
そんな2023年、AIが描いた目を惹く美しいビジュアルの歴史カードゲーム『Hi!story(ハイストーリー)』がリリースされました。
小中学生の「歴史がつまらない」という悩みに一石を投じて、学習の入り口から楽しんでもらうという熱い想いから誕生したとのこと。
一目でそのコンセプトに共感して子どもたちと遊んでみたところ、やればやるほど奥深さにドハマり!
歴史を全く学んでいない子どもでも、印象的なイラストとカッコいい歴史フレーズに触れるうちに自然とキーワードが身につき、年齢を問わずゲーム上級者も楽しめる本格仕様です。
そして驚くべきは、制作者が東大・慶応・法政に通う現役大学生たちだということ!
一体どういう方たちなのか気になったので、お話をうかがってみました。
歴史カードゲーム【Hi!story】ハイストとは?
『Hi!story(ハイストリー)』(通称:ハイスト)は、歴史の主要人物が描かれた対戦型トレーディングカードゲームです。
掲げるビジョンは「歴史を楽しく、主体的に」。
大学や学部も異なる現役大学生が集まり、起草から製作販売、さらにHPや説明動画の編集まですべて自分たちで手掛けています。
これまで未経験では難しかったイラストをAIを駆使して美しく描き、ゲーム性も徹底的にこだわって作りこまれ、Twitterやゲムマで多くのゲームファンから熱い注目を浴びています。
早くも第2弾となる新デッキも発売され、今後の展開にも大きな期待が寄せられています。
制作メンバーは東大・慶応・法政の現役大学生
「ハイスト」を制作したのは、次のようなメンバーです(公式HPより)。
名立たる大学に在籍する現役学生たち。さぞかし小さいころからガリガリ勉強して暗記も得意で、ましてやゲームなんかとは無縁だったんだろうな、なんて思ってませんか?
実際に彼らの話を聞くと、そんな先入観が間違いであることに気づくはず。ゲームのコンセプト同様、製作過程そのものから私たちが知るべき「楽しく、主体的に」おこなうヒントがたくさん隠されています。
「子どもに楽しく勉強をしてもらい、興味を広げて感性豊かに育ってほしい」と願うパパ・ママにも、ぜひ読んでいただきたい内容です。
「歴史×ゲーム」制作のきっかけ&運命的なメンバーの出会い
今回は、制作の中心メンバーである3名に『ハイスト』誕生に至るまでの経験や思いをうかがってみました。
『Hi!story(ハイストーリー)』は美しいイラストがキャッチーで、一目でハートを射抜かれ、気づいたらポチってました笑
プレイするうちに、歴史のキーワードや偉人の関係がうまくゲームに織り込まれているという発見の連続で、毎回うならされています(笑)
ところで、みなさんは大学も学部もバラバラですが、仲間になったきっかけ・ゲームをつくろうと思ったきっかけは何ですか?
メンバーは全員が、東大の学生団体KINGで出会いました。
最初は私が「歴史カードゲーム」というアイデアを持っていて、実際に作るまでにメンバーがどうしても必要だったので、お願いをして仲間集めをしました。
ゲームを作ろうと思ったきっかけは、歴史が好きという思いがあったのと、シャワーを浴びていたらひらめいて、これはいけると思ったのが最初です。
ふだん大学では、どんな勉強をされているんですか?
力を入れているサークル活動やアルバイトなどあれば、聞かせてください。
東京大学 経済学部に所属しており、現在は休学しています。
東大は1、2年生が教養学部といって「文理を問わずいろんな学問を学んでみよう」の期間なのでまだ経済学の基礎レベルしか学べていないという状況です。個人的には理論的な経済学よりも消費者心理のようなことをこれから学べたらいいなと思っています。
休学中ということもあり、サークル活動はいましておらず、去年の秋に任期の関係で引退したビジネスコンテストの運営団体に割いていたリソースを今の活動にシフトした感じです。
金融関連のベンチャー企業で長期インターンシップを行っており、営業の戦略のことを学んで今のこの活動に活かしながら頑張っています。
法政大学 経済学部 国際経済学科に所属しています。
僕は経済学部なのですが、大学ではメインで英語を勉強していました。というのも、僕の学部が英語の授業がたくさんあるのと、経済について僕は深く興味がないまま大学に入ってしまったからです…(過去の自分よ、ちゃんと調べるべし!)笑
実は僕は、高校時代は理系専門の学校に通っていて、ロボットエンジニアを目指しながら脳波とロボットの研究をしていたのですが、最後の最後で電気通信大学の総合型選抜に落ちてしまって3年間の集大成ということもあって、理系の道を断念しました。 (大学で学びたいこと!で絞って大学に行くなら、浪人してでも理系に行った方が良かったかもしれません!笑) なので、僕は未だに大学でこれを学んでよかった!!というのに出会えてません笑。
これからこの活動を通して、「経済学的にはこんな視点はどうなんだろ?!」というのを見つけていきたいと思っています。
慶応義塾大学 法学部 政治学科に所属しています。
法学部なので法律をガッツリ勉強していると誤解されがちなのですが、それは法学部法律学科の方なのです。私が所属する政治学科の方は、東大で言う教養学部(塩山くんも所属していた!)に近くて、学びたいと思えば文学から物理学まで本当に幅広くカバーできるのが魅力です。(アメリカ音楽史の授業がめっちゃ記憶に残ってます笑)
1年生の時に受講した社会学に興味を持ったので3年生からは社会学系のゼミに入る予定です。
バイトは1年生の頃から塾講師のアルバイトをしています。生徒さんの「わかった!」の顔を拝める瞬間がやりがいです。
ハイスト誕生に影響した!?好きな歴史人物&作品は●●●
第一作は「平安・鎌倉」、「幕末・明治」、新作は「室町戦国」を取り扱っていますね。
ちなみに好きな歴史上の人物は誰ですか?理由も教えてください。
田沼意次が好きです。
(どちらかというと有名どころよりもこういう影の実力者ポジの人が個人的に好きです。)
当時の百姓からひたすら絞り取るだけの状況に見切りをつけてお金の集まる商人・商業を奨励してその分お金をとって財源にしようとした着眼点がすごいと思っています。
現在の視点から当時を外観したら農業は限界あったよねというのは簡単ですが、当時それに気づいて実際に実行したことは並大抵のことではないと思います。
昔は賄賂で汚いなどの悪評が多かったそうですが僕が教えられた頃かその少し前くらい?から「改革は最終的にはうまくいかなかったけど先見の明があった」というように評価し直されていて嬉しいです。
真田信繁です。
(注:真田幸村としてよく知られている人です)
文系だった僕に理系の道を最初に選ばせてくれたキーマンが彼なので笑(当時、ものすごい好きだったので、理系高校のプレゼンにあえて歴史の真田信繁の生涯を語るっていうのをやってそれで受かったので好きです!笑)
大人になってから好きになったので言うと、坂本龍馬です。
やっぱり革命を起こしたって意味でも自分が目指してるところでもあるので。 (誰しもが馬鹿げてると思うことをやり遂げる力に憧れます)
現代人にはなりますが、宮崎駿と小室哲哉が好きです笑 (元々、美術とか大好きでその影響でこの二人の芸術チックなところに惹かれてます笑)
好きな歴史上の人物はビスマルクです。
人が好きと言うよりは彼の「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という名言が気に入っています。どうして歴史を学ぶべきなのかってよく質問されることがあるんですけど、この言葉が答えになると思っています。歴史には失敗のサンプルがたくさん転がっているので過去に学んで、未来に生かすことが歴史を学ぶ一つの意義だと思うんですよね。
ハイストメンバーの間でもこの言葉はよく使ってますね笑。
デュエマ、遊戯王、トランプ、もののけ姫、サマーウォーズなどです。
ゲーム制作に必要なスキルや経験って?
ゲームを作るにあたって、「こんな経験が生きた」「こんな勉強しておいて良かった」というものがあれば教えてください。
①ゲームを楽しんでやっていた経験
ゲームを楽しくやっていたからこそ、ゲームの面白さを知っていたからこそゲームを作る側に回れたのかなと思います。 (親御さんを中心に割と否定的な方が多いですが、僕自身は語彙の大半、集中力をゲームや漫画で得たと思っています)
②ビジネスコンテストの運営団体での経験
ビジネスコンテストの運営団体ビジネスアイデアを0から作り上げたり、参加者の満足度を上げるためには何ができるかについて考え続ける経験は現在作っているものが届いた人の満足度を上げるために何ができるか、などを考えるときに活きています。
③デザインを勉強した経験
前述の団体でデザインを学んでいたことが製品の見た目やSNS上で拡散されやすいクリエイティブ作成に活きてるのかなと思っています。特に何も知らない人が見たらどう思うのか、という他者視点で見る癖がついたのがとても役に立っています (やはり綺麗なデザインが飽和している世界でイマイチな見た目をしてると見向きもされないので…)
①とにかく他のゲームを研究
他のゲームを見まくりました。ルールや世界観を観察したり、とにかく既存のゲームはみて、他のトレカには無い要素を詰め込みたいと思ってました。 また、本来はもっと多い枚数で色々できるカードゲームを作りたかったのですが、予算の関係上最初は最低限成立するもので作ることになり、今の形になりました。
②高校時代の研究活動(メンバー)
僕は高校時代に研究活動をしていたのですが、その際に大きく学んだことは、メンバーの重要性です。 当時は僕はプログラミングも全然できずだったので、普通ならプログラム要員を誘うのですが、あえてプログラムはそこまでできないけど勉強ができて、英語が喋れる帰国子女の子を誘いました。 結果的に、その彼と進めることでシンガポールでの発表にこぎつけました。 メンバーを集めるときに僕が重視しているのは、「考え方や趣味嗜好が合うかどうか」「一緒に成長できるか」です。 短期的な作業で解決したいことなら、「能力」で人を選ぶこともできると思うのですが、「能力」は一緒に活動していく中で身に付けることができるし、長期的な視野でみた時に、その人固有の仕事のやり方が凝り固まっていると後から変えてもらうのは結構な難易度になります。 また、どんなに能力が高くても「やる気がない」「思考が合わない」となると、難しくなるので、必要な能力の原石を持っている人を見つけるのが一番近道なんじゃないかとこの高校の経験から学びました。(見分け方は直感です笑) 一番最初にあった時がそれが分かるタイミングかなって思ってます。
②高校時代の研究活動(巻き込み力)
この活動の中で大きくことが動いていたのは、基本的に外部の友達や先生をうまく巻き込めた時です。本当に感謝しかないのですが、思いに共感してくれて、部品をくれたり、はんだごてを教えてくれたり、回路設計を一緒にやってくれたりと、同じ研究班ではないのにやってくれる人がたくさんいました。 結果的に、チームメンバー以外の人間をうまく巻き込めたのが大きかったなと思っています。 今回のこの活動でも、博士ママさんを初めとして色んな方々に助けてもらっていることが1つうまく行く要因になるんじゃないかと思っています。
③研究活動、ゼミ、入試(プレゼン編)
高校の推薦入試時から今まで常に自分にはプレゼンがまとわりついていたので、(何度やっても慣れないのですが)練習は何十、何百としていました。 そのおかげで、プレゼンには慣れてカードの紹介や説明もアドリブでもある程度はスムーズに説明できるようになってるかと思います。
カードゲーム初心者だったことは有利に働いた気がします!
残りの2人のメンバーは小さい頃からカードゲームに触れていて、カードゲームの構造を作る時から理解していたのですが、それに対して僕はあまりやってこなかったです。
なので制作の時は初めてカードゲームを遊ぶような初心者視点でのアドバイスで貢献しました!
ゲーム制作でこれが大変だった!さまざまな課題を乗り越える
ゲームを作るにあたって、苦労したところ、むずかしかったところを教えてください。
・テストプレイ問題
テストプレイはとにかく回数を踏まなくてはならないので、大変でした。また、中途半端に出すのは納得がいかない(それでも改善点が山ほどあるので)と思っていた分、時間がかかってしまいました。
・イラスト
イラストは通常でいくと、どんなに安くプロではなくアマチュアのかたでも1枚8000円はします。 しかし、それでは学生である我々では成立しません。 したがって、AIイラストに力を借りています。 ただし、これから先AIイラストはあと半年で寿命が終わります(普及するスピードが早くそこにたいして付加価値がつかなくなる)。 AIイラストは神様からのプレゼントだと思って、ここからはハイストとしてのブランドを築き上げたいと思っています。
・何をもってゴールとするか?
もの作りはどこまでいってもより高いレベルを追及できる気がしています。それはコンセプトにしても、イラストにしても、デザインにしてもです。 ただし、ものを作った先には「売る、広める、使ってもらう」という段階があり、そのフェーズを超えなければ作っても意味がありません。 そことのバランスを調整するのが、はじめての自分達には難しい点でした。
・予算との話し合い
本当はより高度なゲームを考案していました。 が、それを成立させるための予算がなく必要な部分以外は全て取り除きました。いらない部分をハッキリさせることも重要だと学びました。
ハイストのここに注目!【Hi!Story】3つの魅力と今後の展開
ハイストのここがスゴイ!ここを楽しんでほしい!という魅力を熱く語ってください。
「ビジュアル」「プレイヤー次第で無限に広がるゲーム性」「新時代の教育」
この3つが主な魅力だと思っています。
まずは「ビジュアル」。AIの力もありますが、コンセプトにそったデザインとAIとのマッチが他のカードにはまだない部分だと思っています。 どんなものも後追いが必ず来るので、いずれは類似品が出てきますが今この瞬間このクオリティを再現しているのは我々だけです。
つぎに「プレイヤー次第で無限に広がるゲーム性」。このゲームは、ゲーム性自体が非常に複雑になっていたり、使う要素が多い(チップなど)わけではありません。ただし、他のトレカ同様にカードの組み合わせによって遊び方は無限に広がります。また、その場その場の手札で強い組み合わせを考えなければならないので、一瞬の判断能力も求められます。 裏向きになる状態が相手より、1歩遅れると一気に不利になります(だからこそ、先行有利のゲーム性は否めないですが)。それらを含めて考えるのが面白いと思います。
最後に「新時代の教育」。このカードゲームをきっかけに、堅苦しくなくとも子供の興味をひけることが一番の効果を発揮するのだということが証明されることを期待しています。 特に、世代間が2つ以上離れる方々は、この方式を理解できないという方も一定数います。 確かに、この方式(まるっきりゲームの中に要素だけが教育)は世に出ていないものですし、教育的効果が証明されていないので現在の教育的視点で見れば遥かに理解し難いものです。 しかしながら、思考や理念は物事は時代の流れと共に変わっていきます。いや、人の手によって変えられていきます。 その転換点にいると思えば、なんら不思議なことはないと思っています。 このカードゲームがカードゲームとして流行れば流行るほど、子供の記憶に歴史が染みつく。そんな世界を創造しています。
最後に、今後の展開や発売予定について教えてください。
世界史編も出します。クラファンをします。 ポケカを超えます。本気で日本一のカードゲームを目指します。 最終的にはカードゲームにとどまらず、他の様々なこともやっていくつもりです。
たくまさん、塩山さん、高橋さん、
今回はためになるステキなご回答を、ありがとうございました!
ハイストは、すでに第2弾となる新デッキ「室町・戦国」編も発売されたところです(キャラがめちゃくちゃかっこいい!)。カードの文字も見やすくリニューアルされ、さらに遊びやすくなっています。他の時代のデッキや世界史編の発売も待ち遠しいですね。
挑戦し続ける3人のご活動を、これからも応援しています。
ハイストをやってみたいという方は、こちらから↓
インタビュー後記
今回のインタビューで、印象に残る内容がたくさんありました。
「吸収力」「行動力」「成長力」「巻き込み力」「誰しもが馬鹿げてると思うことをやり遂げる力」…。
最近注目されている「STEAM教育」をカタチにしたかのような、学問の垣根を超えた厚みのある活動だと感じました。
「予算や制限の中で、いらないものを除いて」いきながらも、「ゆずれないこだわり」という軸をしっかり持っているからこそ、作品が磨き上げられているように感じます!
さらに進化し続けるハイストーリーから目が離せません。
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