「折り紙」といえば、定番の「鶴」・「飛行機」など、誰もが子どものころ遊んだ経験がありますよね。
そんな「折り紙」、今や芸術としても最先端技術としても目を見張る進化をとげていることをご存じですか?
今回、関西屈指の進学校・東大寺学園の学祭にお邪魔し、ひときわ異彩を放つ部活「折り紙研究部」にて、1枚の紙に情熱を注ぐ少年たちを目にしました。
驚いたのは、見るものを圧倒する作品のスゴさだけではありません。
そこから読み取れたのは、自由な校風のなかで育んでいる彼らの”強み”とその”姿勢”。
これから中学受験を考えている方や、将来の進路や勉強法に不安を感じている方にとって、高いモチベーションを保つためのヒントが、ここに見つかるはずです。
まずは、純粋に折り紙作品の美しさと巧みさを堪能しながら、頭脳明晰な彼らの秘密に迫ってみましょう。
部活「折り紙研究部」のスゴイ作品たち
中高一貫の男子校。
そこに「折り紙研究部」というものがあるなんて、最初は想像すらしていませんでした。
ロケット研究会ばりの「紙ヒコーキ」や理系男子らしい「図形」的な作品でも置いてあるのかな?
と思って覗いてみると…
一歩その展示教室に入った瞬間、息をのみました。
(作品名「バイオリン奏者」)
な、なんていう繊細さでしょう!!
断っておきますが、基本「1枚の紙を、ハサミを使わずに指で折って」作られています。
私のような素人には、折り方がまったく想像できません。
(作品名「弥勒菩薩半跏思惟像」)
細かい指や顔の表情まで、「折る」ことで表現されていて、もう脱帽。
(作品名「スピノサウルス」)
この動き出しそうな自然な体の丸み、口や手足の細部に至るまで完璧に再現。
(作品名「オオミズアオ」)
フサフサの触覚まで丁寧に折りこまれていて、ほんとうに美しいです。
(作品名「ティラノサウルス全身骨格」)
こちらは、数枚の折り紙で作られている作品。
何がすごいって、これ「創作」なんですって!!
(作品名「そんな時も僕はビッグマックを食べた」)
こんなユニークな作品もいいですね。
そしてこれも「創作」。
どうやって一枚の紙がこんな形になるのか、全く理解できません。
ちなみに、創作する場合は、このような金や銀を使うことが多いとか。
理由は「折り目がつけやすく形を保ちやすい」からなんだそう。
作品によっては、裏面にうすい銀紙を貼り付けているものもありました。
(作品名「ドワーフ」)
かわいい!!豊かな顔の表情も折りで再現。そんな作品の裏はというと・・・
銀紙が重ねられてしっかり折り込まれていました。
こんなふうに、素材にもこだわっているんですね。
そして、こちらの展示物(?)は、展示名「折り紙をする部員」。
(ちゃんとそう書いてあった)
展示の中で唯一動く作品 pic.twitter.com/VHBAVwMLQM
— 東大寺学園折り紙研究部 (@tdj_oriken) September 12, 2020
目の前で突然はじまった動く展示物(関係ないけど、指がキレイですw)。
作り方など何も見ないで折っていますが・・・
完成したのは、こちら。
(作品名「くらげ(即興)」)
リ、リアル!
そしてこれも「創作」しかも「即興」なんですって。
制作中の彼の頭の中は、どんなふうになっているんでしょうか。
どの作品も感動ものなのですが、私がとくに驚いたのはこちらの作品群。
(作品名「タテゴトアザラシの赤ちゃん」)
とても小さなカワイイ作品。でもアザラシの顔をよく見ると・・・
てっきりペンか何かで描いているのかと思いきや、目やヒゲは裏面の紙の色を利用していたなんて!驚愕。
(作品名「スズメバチ」)
60cmの大きな紙を使って作られた、恐怖感すら漂う!?リアルなスズメバチ。
(作品名「トラ」)
これらのシマ模様も、もともと印刷されているわけでも塗り足したわけでもなく、裏面の色を巧みに表面に出して表現されています。
それを知って2度驚きました!
(自分で2色の紙を裏表貼り合わせて1枚の紙を作ることもあるそうです)
スゴ作品のなかでもとりわけ重厚感ただよう作品がこちら。
(作品名「ディバインドラゴン」)
こちらは、270工程以上の大作で、部長Tくんが9時間をついやした渾身の一作。
何日かに分けて折り上げたそうです。まさに圧巻!
すべてをご紹介することはできませんでしたが、スゴイ作品は他にもまだまだたくさんありました。
ただ、写真ではリアルなスゴさをお伝えしきれないのが残念です。
2020年はコロナの影響で縮小開催となった学祭ですが、例年は誰でも自由に入場して直接作品を鑑賞できます。
機会があれば、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
東大寺学園「折り紙研究部」とは?
奈良にある東大寺学園「折り紙研究部」は、年々メンバーを増やし「同好会」から正式に「部」に昇格したばかり。
現在は、高校生1名、中学生19名が在籍(2020年9月現在)し、活動しています。
関東では開成、筑駒、早稲田、渋幕など、有名な進学校を中心に「折り紙」の部活が盛んですが、関西ではまだまだ少ないんだそう。
中には、「折り紙研究部に入りたくて東大寺を目指した」という部員も。
普段は週2程度集まって、作品の相談をしたり見せ合ったりするなど、とても自由に活動を楽しんでいます。
そんな「折り紙研究部」の雰囲気は、他の部活動に類を見ないほど、静かな独特の空間。
各自が黙々と折り紙を折っているように見えて、ときどき「これって、どうするん?」と聞き合ったり、とても仲よさそうな部員のみなさんです。
それぞれが自分の世界に入りながらも、やわらかい緊張感を共有したような不思議な一体感を感じました。
今回、学祭に向けて部員みんなで制作したという目玉作品がこちら。
(作品名「ウマ」)
人間が乗れそうな大迫力の大きさです。
元の紙は3.6m、何枚かの紙を貼り合わせて一枚にしたのだそう。それだけでも大変ですね。
一人ではできない作品に、折り紙研究部のみなさんの団結力や仲の良さがうかがえます。
それにしても、こんなに少年たちを熱中させている「折り紙」とは、どんな魅力があるのでしょうか。
気になったことを直接うかがってみました。
「折り紙研究部」部員さんに聞きました
根っからの「折り紙少年」Hくん
まずお話をうかがったのは、部員Hくん(中1)。
彼は、小学生時代から入部の意志をかためたうえで受験に臨んだ、根っからの折り紙少年。
「折り紙は3種類。1枚折り、パーツ、ユニットがあります」
マジメで無口そうな印象の彼ですが、折り紙について尋ねると目を輝かせながらアレコレ教えてくれました。
大事そうにカバンから取り出して見せてくれたのは、みんなが”神”とあがめる折り紙作家・神谷哲史(かみやさとし)さんの書籍。
折り紙のバイブルといったところですね。
ただ、こういう専門書は中学生にとってちょっと高価なのが悩みなんだそう。
たくさん教えてくれた折り紙理論(ごめんなさい、難しい話はあまり理解できなかった笑)からも折り紙愛が伝わってきました。
そしてなにより、先輩たちの作品に敬意をもって、その凄さを語ってくれる姿がとても印象的でした。
将来の夢は「〇〇」部長Tくん
中1~高3という中高一貫校でありながら、中3にして部長をしているTくん。
将棋の藤井君をおもわせる、大人びた優しい雰囲気を持った頼もしい部長さんです。
折り紙の魅力は「つくりたいものを、一枚の紙の上に落とし込めるところ」と語る様は、芸術家そのもの。
かっこよすぎます!
驚いたのは、「折り紙は中学入学後に始めた」という点。
今では、展開図を見ただけでなんとなく折り方も分かってしまうという超人ぶりです。
すでにハイレベルな創作折り紙にも挑戦している彼ですが、ゆくゆくは自分で創作を行っていきたいとのこと。
そんな彼の将来の夢は「医師」。
Tくんほどの手先の器用さがあれば、どんな手術も正確に行ってくれそうですね。
スゴイ作品を生み出すヒミツを探りたいと、他にもいろんな質問をぶつけてみました。
折り紙が向いている人は?という問いには、「手を動かすのが好きな人」とシンプルな回答。
てっきり立体図形が得意な理系少年が向いているかと思いきや、他の部員さんも口をそろえて「文系も理系も関係ないと思います」と光が差す答えをいただきました。
しかも、制作中は脳をフル回転させないといけないと思っていましたが、「折り紙をしながら、話をしたり動画をみたりしてます」と、意外にも感覚的に作品を仕上げているんだそう。
お話をしているほとんどの間、彼らの手には一枚の紙。それを愛おしそうに指の上で形作っていました。
「ほんとうに自由にやってます」
何度も出てきた「自由」というワード。
どうやら、彼らが高度な知力を保っている秘訣は、そこにあるようです。
折り紙という熱中できる何かに、思い切り自由に好きなだけ取り組める。
そこに注ぎ込まれる集中力、できたときの達成感。
自由にともなう責任も背負ったうえで、実際に自らの手を動かして生み出した結果で、みんなをこんなに感動させています。
「〇〇だから」と言い訳するのではなく、難題にも全力でぶつかり、ひとつひとつ解決しようとする姿勢も、彼らの強みなのでしょう。
取るに足らない質問をした自分が恥ずかしく思えちゃうほど、彼らが燦然と見えました。
どうかこれからも好きなことに思い切り情熱を傾け、自分の中にある無限の可能性をどんどん開花させていってくださいね。
親切に対応してくれた東大寺学園折り紙研究部のみなさま、楽しい時間をありがとうございました。
まとめ
今回は、【折り紙の部活】進学校-東大寺学園のすごい”紙”ワザ~強みの秘密~について、ご紹介しました。
「折り紙」の魅力と可能性は、芸術面だけにとどまりません。
「手は第2の脳」ともいわれるように、指先をつかう折り紙は、高齢者や小さい子の脳トレとしても再注目されています。
折り紙の卓越したワザは、医療や宇宙開発といったテクノロジーにも応用され、まさに日本の誇るべき伝統技術。
その魅力にいち早く気づいた中学生たちが、部活を通して折り紙を自らの血肉へと昇華させていることに、本当に驚かされました。
今回は、実際の中学生の活動を垣間見て、「日本の文化・折り紙」を見直すとともに、「日本の将来は頼もしいな」と感じずにはいられませんでした。
自分の手でどんなカタチにでも変えられる折り紙は、なんだか人生を象徴しているかのようですね。
さて、あなたは今、なにか好きなことに思い切り打ち込めていますか?
東大寺学園の情報研究部(取材時:情報同好会)のレポートも合わせてどうぞ。
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